災害心理研究所 The Center for Psychological Studies of Disaster

お知らせ

令和6年能登半島地震に被災された皆様へ その9:災害時の子どもたちの心の健康を守るために大切なこと

  能登地方を襲った大地震と津波により多くの尊い人命が奪われ,現在もなお,行方のわからない人々がたくさんいらっしゃいます。愛する家族や知人,友人を失った人,家を失ったり,家に被害を受けた人も大勢います。今回の地震や津波による影響はあまりに甚大で深刻です。被災地のすべての皆様に心からのお見舞いを申し上げます。
 
  自然災害の被災地では,そこで暮らしている子どもたちの心の健康問題が懸念されます。2011年,東日本大震災を経験した福島は,地震,津波,そして放射能汚染による甚大な被害を受けました。特に放射能汚染による影響は,長期にわたり人々を苦しめ,子どもたちは外遊びさえ許されない状況の中で生活せざるを得ませんでした。
 
  発達心理学の知見によれば,子どもたちの心は,お母さんの心と強く結びついています。これを愛着といいます。愛着は心の発達や,人間関係を築いていく上でとても重要な働きをします。また,愛着に基づく母子の強い結びつきによって,母子はお互いに影響を与え合う(相互作用)存在となります。子どもたちはお母さんに様々な影響を与えますし,それとは逆にお母さんも子どもたちに様々な影響を与えます。
 
  この絆のおかげで,仮に子どもたちが心にショックを受けたとしても,子どもたちは守られ,癒され,回復していくと期待されます。しかし,災害によって心にダメージを受けるのは,子どもたちだけではありません。災害心理学の知見によれば,災害によって心に影響を受けやすいのは,小さな子どもをもつお母さんたちなのです。災害によってお母さんたちの心も傷ついてしまったら,子どもたちの心が守られなくなることにつながります。
 
  子どもたちの心の健康を守るためには,子どもたちの心のケアだけでは十分ではなく,お母さんたちの心のケアを同時に十分に行うことが何よりも大切です。お母さんたちの心の健康を維持することが,子どもたちの心の健康を守ることにつながるのだと考えています。

  

  一日も早い被災地の復旧,復興を祈ります。

災害心理研究所 筒井雄二

▲ ページ上部へ戻る