災害心理研究所 The Center for Psychological Studies of Disaster

福島の母たち・若者たちの心からの声を発信するプロジェクト

震災の経験とこれからのことについて

氏名 富山萌々
原発事故当時に居住していた市町村名 西郷村


 震災が起こった当時、私は小学生だった。地震の発生から避難まで、いつ次の揺れが来るのかわからない不安や家族が迎えに来るまでの間の不安がとても大きく、家族を含め無事を確認できた後も、揺れているような感覚や小さな余震に敏感に反応してしまうことがしばらく続いていた。必死であまり覚えていないが、机の下に隠れるという普段しないような行動は、定期的に行われていた避難行動での流れを体が覚えていたのだと思う。

 私が住んでいる地域では当時、他の地域で避難生活を強いられていた人や自分の住んでいた家に帰ることができなくなった人、一部または全部家が壊れたりライフラインの関係で生活に不自由があった人などに比べ、あまり震災の被害者という意識や実感がなかった。人間関係に関する問題も特には起こらず、生活の形態自体に大きな変化はなかったが、自分の意識には以前と比べ変化したことがあった。

 不安という点に関して、それまではただ大きい音に驚いていただけの地震の警報が、耳にすると何かとても恐ろしいと感じる音に変わってしまった。また、被害があまりなかったと述べてはいるが、テレビやインターネットなど様々なメディアから情報を得ることで自分たちの生活は本当に大丈夫なのか、これから先も普通に生活していけるのかなどを考えることで、普段はあまり感じないような負担がかかっていた。

 悪い面だけではなく、震災の経験をしたことにより得たこともある。時間が経つにつれて震災の恐怖や記憶が薄れていっている一方、少しずつ揺れが大きくなる地震が来ると、震災の時のような地震になったらと思うことがある。しかしただ不安なだけではなく、その後自分がどう行動するのかを考えることができるようになったように思う。また、震災を経験したことによって、大学で震災関連の話に触れると、当時はもちろん今でも知らなかったことがまだまだあると感じることが増えた。これらのように私たちが普段できることや、災害を経験した後に考えられることはあると思う。そのため、震災の記憶を伝えていくことだけではなく、記憶と経験から過去を振り返って、現在やこれからの問題、支援などについて分析していくことが重要であると考える。

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