災害心理研究所 The Center for Psychological Studies of Disaster

福島の母たち・若者たちの心からの声を発信するプロジェクト

「わからない」福島・見えにくい原発事故の被害

氏名 渡邉吏音
原発事故当時に居住していた市町村名 福島県田村郡三春町


 私が福島で生活している若者として全国に伝えたいことは、福島県内を含む全国で正しい情報が浸透していないということである。

 福島県産の食品について、現在の福島県民でも不安を抱く人はいる。しかし、「福島県産」への抵抗感は2013年では福島県民と県民以外で大きな差はなかったが、2019年では福島県民の方が明らかに福島県産を避けている割合が小さくなっていることが分かっている。前述の通り、福島県民が放射性物質に関することに不安を抱いていないわけではないため、福島県民以外には全量全袋検査を実施していることやND(不検出)であることなどの認識や正しい知識が十分に身についていないと感じている。また、放射性物質を含む水の処分や放出について、「わからない」という意見が一番多かったことが分かっている。これは、判断ができない、つまり、判断材料になる情報が国民に十分に流布されていないのではないかと思う。

そして、東日本大震災や原発事故に関する報道が減少していること、その地域の福島県からの避難者に関する報道が取り上げられやすく、福島県そのものや福島県産品に焦点を当てる報道が少ないことが課題だと考える。また、科学的にリスク軽減が証明されたとしても社会的に受け入れられるかは別であり、そのためにも繰り返し正しい情報を発信することが不可欠である。

また、福島が抱える問題に、心を含めた被災者の被害が見えにくいというものがある。原因としては、原子力災害は他の自然災害等と比べ公害としての性質が異なる点にある。原子力災害では原因となりうる物質が明らかで予防対策がとれるという意見もあるが、病気の要因は放射線以外にもストレスやタバコ等日常生活の様々なことにある。そのため、少量の放射線による病気リスクの増加は、他の要因による病気の影響によって隠れてしまうほど小さく、明らかな増加を証明するのは難しいとされると考えられている。

また、被災者の心のケアの軽視がされているという問題がある。東日本大震災における震災関連死の死者数は、震災から5年半を越えて0人になっているが、これは年月を重ねて震災との明確な因果関係を発見するのが見つかりにくくなっただけであり、5年半以降も心理的な負担などによって死亡した事例が全くないとは言いきれないと考えている。

 以上より、過去の公害に比べ事故発生の責任の所在が明らかにされず被災者が増加、救済の遅れが今後発生するのではないかと考えている。そのような事態を避けるためにも、正しい情報の浸透と被災者の心のケアを含む継続的な支援が必要なことを伝えたい。

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